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ラーニング & スタディ・ポートフォリオ

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ラーニング & スタディ・ポートフォリオ


  ラーニング & スタディ・ポートフォリオ(通称、学びのポートフォリオ)は、大学の授業に関連した学修と、個々人の関心にもとづく広範な学習、研究の双方について、学生一人ひとりのポリシーを明確して、それらに依拠した具体的な学びの目的・目標、あるいはテーマ、またその計画や手続き、方法あるいはその主題の魅力を記述し、その成果を画像やpdf文書のエビデンスとともに記録して学びの振り返り基盤にするとともに、それらを公開できる仕組みです。


 このポートフォリオの主目的は学生個々の主体的な学びを後押しし、その成果の公表とそれによるつながりの形成に役立てることです。大学にはカリキュラムや学位授与に関するポリシーがあり、それにもとづき授業が実施されています(カリキュラム・ポリシー & ディプロマ・ポリシー)。一方、学生の学びにはむろんそれらの学修もありますが、そればかりでなくそれら以外の個々人の興味や関心、目的に応じた独自の学習や研究もあります。
 本学は学生一人ひとりに豊かな学びの可能性を拓いてゆくことを基本的な教育理念にしています(「お茶の水女子大学は…高度な専門教育における長年の蓄積を生かし、それを発展させ、一人ひとりに豊かな学びの可能性を拓いてゆく。そのために、問題関心の広げ方、専門の深め方、固有のテーマの発見の仕方についても、自由度の高い学びを実現する『本学の基本的教育理念』より」)。
 そのために学びの支援においてもその学修と学習・研究の総体に対して促進を図ります。授業をつうじての学修は質の高い授業実施と学修成果の評価法をもってその品質保証をなします。お茶の水女子大学の学生は学修状況チェックシステムと授業アンケートシステムにより、そこに呈示されるインフォ・グラフィックスによりその保証のほどが詳しく、かつわかりやすく学生と教員双方に確認できるようになっています。

 一方、学生が授業の範囲を超えて個々人の関心にしたがって自学的に学びを進めていく学習・研究については、その内容を積極的に表現し、目標や計画の記述機会を大学として提供することをもって後押しし、さらにそれらの成果を積極的に公開していくことをつうじて多様に、広く、深く、個性的に学んでいくことに資する基盤を、このポートフォリオシステムが担います。


 とりあえずここではこのポートフォリオの四大特徴と、典型的な質問、2つに簡単に応えることで、このシステムに対する理解をすこし深めたいと思います。



learning & study portfolio の四大特徴


 いまや学修ポートフォリオの利用は多くの大学でおこなわれ、ごく普通のツールになりつつあります。しかし、そのほとんどは商品購入による利用であるため、レディメイドの域でその商品を使う範囲に留まってます。それに対して本学の学びのポートフォリオはそもそも学生一人ひとりの個性にあったテイラードの学びを実践するための仕組みとして発想したため、どこの商品でもなくその仕組みのすべてが手仕上げのオートクチュールで仕立てられています。つまり、システムに合わせて使うのではなく、本学の学生に馴染むようシステムがつくられています。その結果、ポートフォリオはつぎのようなオリジナルな特徴をもち、さらにすでに稼働しながらその完成を目指して常に必要に応じた開発と拡張が進められている生きものなのです。

(1)授業に直接関わる学修(ラーニング)だけでなく、授業外に各人がみずからの興味関心で学んでいる広範な学習・研究(スタディ)も含めた総体としての学びの実際と実績を記し、残し、発信するポートフォリオになっています。

(2)そうした自主的な学びを含めた個々人に独自な学びの基盤となる各人の「学びのポリシー」を表明し、大学が掲げる教学関連ポリシーを受容した上での個性ある学びの活動を推進する仕組みになっています。

(3)お茶の水女子大学がもつ文化資本を礎にしつつ同学生としての学びの成果を広く社会に公開することで、類似のポートフォリオとの差別化が明確な学びの成果表現を可能にしています。それにより新しい人材獲得ルートとして着目されつつあるインターネット上でのポートフォリオ閲覧にもとづく人材オファーの流れに先導的に適応する仕掛けになっています。

(4)2018年夏には学びを「記す、残す、発信する」というポートフォリオの基本機能の延長として「触発しあう」機能が加わっています。発信した内容がまずはピアである学生や学内教職員からのコメントを受けることができるようになり、それを介したコミュニケーションが学びを触発する機会になりつつあります。


ポートフォリオへの典型的な質問

 その1、「これを書くと何の役に立つの?」


 ポートフォリオの記述者となる学生から一番多く尋ねられる質問です。その応えはひとえに「イマジネーション」です。このツールは今までありそうでなかったものです。だから、既存の解がないもの。つまり、創ることがその応えになります。著名な演説のそれに似て、ポートフォリオがあなたたちに何をもたらしてくれるか、と問うより、あなたたちがポートフォリオを大いに役立つように使ってほしい、ということです。想像してみてください。ポートフォリオは「あなたの」大学生活でなす自分自身の学びの目的やテーマ、方法、手続き、その魅力、そしてその成果をインターネットをつうじて公表できるシステムなのです。そのことは上に述べた四大特徴の(3)を最大限に活かすことにつながります。具体的には書きませんが、もうイマジネーションの意味はおわかりだと思います。


 その2、「書いた内容の、とくに成果は誰が、どのように評価するの?」


 お茶の水女子大学での学修成果は現代の大学のそれとして適正な成果表現であるといえるfunctional GPAのstrict GPでなされています。それだけにこの問いは同じような期待感をもって問われることになります。「個々に独自で多様な学習・研究について表現された成果は、いったい誰がどのような了見で評価するのですか」と。この問いは半ばアポリアとわかっていてなされるのでしょう。でも応えははっきりします。

 このポートフォリオは学生個々人がその成果を記述し、公開します。だから、まずはその当人が公表という基準に照らしてその内容に一定の評価を下しています。さらにその公開先はインターネットです。まさに世界に向けて誰でも閲覧できるかたちでただちに公開されます。英語を解する人に向けて発信し、なにかを期待したいなら英語で書けばよいのです。それを観る人、読む人全員が評価者になりえます。その評価はもちろん多様になるでしょう。だからこそ、この評価は評価対象にとっては実は最も望ましいかたちで評価されうる仕組みになっています。

 学修成果の場合、パフォーマンスを評価するのはその担当教員ゆえ、その評価が評価対象にとって最適であるとはかぎりません。授業は個々に閉じられているため、評価対象者のパフォーマンスが卓越しているほど、その評価法や評価力とのずれは大きくなりがちです。個性ある学びという旗印の限界はそこに留まる限りすぐにみえてきます。また、それは大学から先の学びにあっては次第に深刻な問題になります。だから、とりわけ個々独自の学習・研究の成果についてはインターネットのような開放空間に公表し、そのパフォーマンスをできるだけ多くの人にみてもらい、まさにそれを評価してくれる人に評価してもらう、という可能性を開くことがだいじになります。ポートフォリオで自分の学びを積極的に公開するのは、そういうオープンシステムこそが個々に独自性の高い学びに関して適正な評価をなしうる肝になるからです。

 果たして観てもらえる人に観てもらえるかどうか、という問いも出てくるでしょう。ここでも先と同じです。それを問うて、ためらい、何もしないより、観て欲しい人に観てもらえるように工夫しよう、ということです。すでに示唆したとおり、幸いポートフォリオは時宜的、社会的にはよい条件下にあります。そのことも認識したうえで、その環境を当の学生であるうちに最大限に、つまり今すぐに活かしていくことです。




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