全学的な観点から成績評価の仕方の妥当性を検討するのに、レターグレードの割合をみて、その偏りやバランスをもって判断することがある。この方法の難点は履修人数が多い授業や必修の授業、あるいは学年相対で履修数が多い初年次での成績評価のされ方の影響が強まってしまうことである。そのため各学年での学生個々の学修成果に依拠した評価妥当性を検討するには適切ではない。ここではその問題を乗り越えるため、原成績ベースで算定しているfunctional strict GPAの学生個々の累積値を指標にして、その全学的な度数分布によって成績評価の仕方の妥当性を可視化し検討した。
これをみると、実際のレターグレード割合に沿うかたちで、Aグレードゾーン(図中の赤い矩形)での度数が圧倒的に多いことが確認できる。ただ、その内部のGPA度数分布形状をみると、A領域のうち合格圏中点、つまり平均的な合格という判定に近い半域(緑線から左半分)において度数が高く、残りの右半域、すなわち「きわめて優秀な成果」であるSグレードに向かっての評価度数は急激に少なくなっていることが確認できる。
このことからレターグレードで5段階に丸めてしまうと、一見A評価が過半を占めて評価の偏向性を疑いかけるのだが、その内部構造の実際は平均的な合格水準をやや上回ったかたちでの「基本的な目標の十分な達成」という評価が、本学2017年度の総合的な成績評価の主体をなしていたことがわかった。厳正・厳格な成績評価の履行という観点から妥当性の高い成績評価がなされていることは実はこの約10年間、同様に認めてきたが、当年度も事実データをもって確認することができた。